「落語ってお爺さんが横に並んで座布団の取り合いっこするんでしょ」
世間によくあるこんな誤解を耳にして「おや?」と思う人なら、すでに落語について知識を十分持っています。
「座布団にひとりで座って、右と左を交互に向いて、面白い話をするのが落語」
これだけ知っていれば、すぐに落語好きになれます。
この記事では、一度生の落語を聴いてみたいと思った人、特に女性の寄席デビューを応援します。
落語に興味があることに気づいたら、善は急げ。さっそく寄席デビューしましょう。寄席でなくても落語は聴けますが、寄席でこその楽しみがあるのです。
お友だちを誘って出かけるのもいいですが、映画や芝居などお一人で出かけるのが好きな人なら、落語もそうしてみるのをおすすめします。
以下ご紹介する東京の寄席四場では、基本的に毎日昼夜落語が聴けます。月の31日は特別興行が多く、通常の寄席番組とは異なります。例年12月29日頃から大晦日まで休みです。
勇気を振り絞っていくような、敷居の高い施設ではありません。本当にフラッと行ってみればいいのです。
落語は古典芸能で奥が深いものには違いないですが、とっつきにくい芸ではありません。基本的には、誰にでもわかる楽しい話です。
寄席デビューするにあたり、事前に知識を仕入れておく必要は特にありません。その日のトリを取る師匠がどんな人かぐらいは調べておいてもいいでしょう。ただ、これも必須ではありません。
初めて行く寄席では、とにかく気持ちを開放して、くつろいで聴きましょう。
事前の想像を超えて笑って、寄席がハネた(終わった)あとはなにひとつ覚えていないというのも、初めての寄席では普通のことです。雰囲気を楽しみにいくだけで十分です。
なお寄席は「よせ」と読みます。よせきではありません。
寄席という言葉が使われる範囲は非常に広いのですが、ここでは落語のための常設の小屋、中でも東京の「寄席四場」と総称される小屋に限定して用います。
・鈴本演芸場(最寄り駅は御徒町または上野広小路)
・浅草演芸ホール
・新宿末広亭
・池袋演芸場
歌舞伎座で毎日歌舞伎が行われているように、寄席四場では毎日落語が掛かっています。本当に古い建物である新宿末広亭など、雰囲気だけでも楽しめること請け合いです。
これ以外にも落語を聴ける施設はたくさんありますが、まずは寄席四場が王道です。
ごく一部例外もありますが、寄席は基本、予約や事前購入は不要です。窓口でお金を払えば(3,000円程度)すぐ入場できます。いまだに現金払いなのでご注意を。
正午前後から始まる昼席と、午後5時頃から始まる夜席がありますが、営業時間内であれば、いつ入っていつ出ても構いません。そして、浅草・新宿・池袋(毎月20日まで)は、入れ替え制ではなく、昼から夜に居続けることもできます。追加料金など要りません。
昼だけ、夜だけでも4時間前後あって長いので、慣れないうちは時間を決めて入場するのがいいかもしれません。夜席の後半になると、おおむね割引料金で入場できるので、その時間帯を狙うのもいいでしょう。
入ったらちょうど高座の最中ということも当然あります。その場合、通路側に座っている人にどいてもらうのは避けましょう。高座の切れ目であれば、まったく構いません。出る際は、一席終わってからにしましょう。
慣れてしまえば、昼席の全部を聴いて、夜席の半分までいても疲れなくなります。
食事の持ち込みは構いません。匂いの強いものは避けたほうが無難です。お箸を持って落語を聴くのは意外と難しく、結局サンドイッチ等軽食がおすすめです。
昼席の開演時から入って、昼のトリまで聴くと4時間程度です。浅草演芸ホールなど、5時間ほどあります。
笑うのは楽しいことですが、意外と体力も使います。慣れないうちは無理しないようにしましょう。一生懸命聴く必要はありません。のんびり過ごすようにしたいものです。
落語が続くと、色物さんの演芸が挟まります。漫才や奇術、曲芸、紙切り等の諸芸を担当する芸人です。落語が続くと疲れるので、お客をくつろがせるために色物が必要なのです。曲芸である太神楽(だいかぐら)など、初めて観るとかなり驚くのではないでしょうか。
落語自体も、最初は軽い噺で、前半の最後になると大きな演目も出てきます。前半のほうが長く、仲入り休憩を挟んで後半です。
東京の寄席は、全体を通して楽しめるよう、出番ごとに求められる役割を果たそうと腕を振るう場所です。聴く側は、演者が作ってくれる流れに身をゆだねるだけで構いません。
眠くなったら寝てしまっても構いません。落語を聴きながらうとうとするのもいいものです。
ぜひ楽しい寄席体験を!