カンヌ国際映画祭出品! 世界中の度肝を抜いたナ・ホンジン監督の衝撃の2本

『哭声/コクソン』

 

 

こんにちは!

今回は韓国の映画監督、ナ・ホンジンによる至極のサスペンススリラーとそのアナザーストーリーとして作られた映画の紹介したいと思います!

ちなみに、どちらの映画もストーリーが明快で最後にはすっきりするというものではありません(笑)。
なんとなくしこりのように残る違和感…どういうこと!? みたいな考察を楽しむ映画です。

※ネタバレにはなる部分もありますので、閲覧の際にはお気をつけください。またサスペンススリラーですので、一部過激描写もございます。「これはまずい!」と思ったら早めに切り上げてください(笑)。

 

至極のサスペンススリラー『哭声/コクソン』

『哭声/コクソン』

(C)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION


story
平和な田舎の村に、得体の知れないよそ者がやってくる。彼がいつ、そしてなぜこの村に来たのかを誰も知らない。この男についての謎めいた噂が広がるにつれて、村人が自身の家族を残虐に殺す事件が多発していく。そして必ず殺人を犯した村人は、濁った眼に湿疹で爛れた肌をして、言葉を発することもできない状態で現場にいるのだ。事件を担当する村の警官ジョングは、ある日自分の娘に、殺人犯たちと同じ湿疹があることに気付く…(C)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION
(引用:amzon prime video)


 

(出典:Klockworx VOD)

一見目につくグロテスクさや不穏な空気は、よくあるホラー映画に感じます。

ですが、この映画は常に信仰心というものについて問いかけてきます。宗教としての信仰はもちろんですが…小さな集落の中で生きていくために暗黙の了解として、信じたふりをしておかなければいけないことや、経験として信じるべきかわからないもの信じるのかなど、様々な角度から信仰を試すテストのように出来事が進みます。

ストーリーはいくつもの分岐を繰り返し、過去と未来のようなストーリーの時間軸と、主人公や容疑者などの登場人物の視点の軸の2軸があり、XとY軸のように色んな地点をいったりきたりしながら展開されます。そのため観客の思考をミスリードさせては何度も覆すような驚きがあります。

XとY軸以外にもテーマとして、宗教、土着信仰、性のタブー、マジョリティとマイノリティなど、たくさんテーマが存在し、わざと観客の思考をあっちこっちにひっぱるような演出がされています。

そのため、怖い! 驚き! うーーん!? どいうこと? なんで?? みたいな観客の感情が大忙しなので、観終わるとある意味走り切った感を味わえます(笑)。

『哭声/コクソン』

(C)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION

またキーマンになる「よそ者」には日本俳優の國村隼さんが起用されているのですが…まぁこれが怖いです(笑)。
國村さんが名もなき「よそ者」の役なので、集落の異物のような存在としてでてきます。振り向くだけのシーンだけでその異様さを伝える演技が素晴らしく、何度も叫んでしまいます。

この映画は基本的に解釈の正解というのがなく、監督自体からも公式な解説もでていないので…観客の想像によって補填される部分が大きい作品です。そのため、噛めば噛むほど味わいが深くなるスルメみたいな楽しみ方ができます。

ただ! そこそこ怖いです。
なので、怖がりの方が鑑賞する際は一緒に怖がってくれる人か、頼もしい鑑賞仲間と共にぜひ!

正統なアナザーストーリー『女神の継承』

『女神の継承』

(C)2021 SHOWBOX AND NORTHERN CROSS ALL RIGHTS RESERVED.

『哭声/コクソン』の続編として考案された映画で、ナ・ホンジン監督が原案・プロデュースし、タイの映画監督バンジョン・ピサンタナクーンとタッグを組んで製作されました。


story
タイ東北部の村で脈々と受け継がれてきた祈祷師一族
美しき後継者を襲う不可解な現象の数々…
小さな村で暮らす若く美しい女性ミンが、原因不明の体調不良に見舞われ、まるで人格が変わったように凶暴な言動を繰り返す。途方に暮れた母親は、祈祷師である妹のニムに助けを求める。もしやミンは一族の新たな後継者として選ばれて憑依され、その影響でもがき苦しんでいるのではないかー。やがてニムはミンを救うために祈祷を行うが、彼女に取り憑いている何者かの正体は、ニムの想像をはるかに超えるほど強大な存在だった……。
(引用:映画『女神の継承』 公式サイト – シンカ – SYNCA Creations)

 

(出典:オリコン洋画館 ORICON NEWS)

今回は『哭声/コクソン』と違い、“モキュメンタリー”という手法を用いて撮影されています。
“モキュメンタリー”はドキュメンタリーの手法を用いながらもフィクションで、まるでこの映画は現実で起こった事実のようにみせるものです。
なので、観客はただのホラー映画よりも一層リアルに感じます。

 

最初はタイの祈祷師一族をインタビューで始まり、まるで爽やかなドキュメンタリー映像のように見せかけて…。
常に不穏な雰囲気満載の『哭声/コクソン』とは違い、“モキュメンタリー”と手法を用いて観客にリアルにおきているように感じさせ、時系列順に怖さのギアをあげていくような映画になってます。

メインビジュアルに入ってるキャッチフレーズのように「祈り先に、救いはあるのか。」…。
この映画は信仰の際に行われる「祈り」という行為に意味があるのかということを提示してきます。

『女神の継承』

(C)2021 SHOWBOX AND NORTHERN CROSS ALL RIGHTS RESERVED.

『哭声/コクソン』の時と変わらず、様々な視点をとりいれているのは変わらないのですが…今回は“モキュメンタリー”という形をとったことで、信仰の“内側”と“外側”をわかりやすく表現しています。
祈祷師という信仰の“内側”にいる人と、ドキュメンタリーを撮ってる“外側”の人です。それによって以前よりの視点の立場を強化させ、観客をとりこみやすくしています。

映画の中で何度も、色んなパータンで“内側”の人が祈るシーンがでてきます。そして“外側”のインタビュアーが何度も祈る意味について問いかけます。「祈り→祈りのあとに起きる事象→祈りの意味を問いかける」というものを繰り返し観客に祈るという行為がそのものに疑問をもつようにしむけています。

そして一貫して伝えてくるのは、何を信じるかによってみえるものが変わるということです。
“内側”と“外側”の人は同じ事象が起きているところにいながら、見えているものの見え方が違うのです。

ストーリーは“モキュメンタリー”という手法を用いたことで、一つの時間軸に沿ってストーリーが進みます。
『哭声/コクソン』と比べるとより怖いのものがしっかり描写されていますが、ストーリー自体はわかりやすい作品となっています。

どちらも不気味でヒリヒリとする映画ではありますが、たまには趣向を変えてみて、新しい世界に飛び込んでみませんか!

 

『哭声/コクソン』はamazon prime
『女神の継承』はamazon prime ※こちらはレンタルになります。
にて配信中です。
(2023/3/31 現在)