昭和の暮らしや美意識が感じられる映画3選

昭和の暮らしや美意識が感じられる映画3選

 

着物や和食、昔ながらの日本家屋——そんな昭和の暮らしや美意識にふと心惹かれる瞬間はありませんか?

今回は「日本の古き良き生活」に触れられる映画を、3本ご紹介します。どの作品も、忙しい現代にほっと一息つけるような作品ばかりです。ぜひ休日のリラックスタイムに観てみてください。

『おくりびと』——静かで美しい所作と、懐かしさと命の尊さを感じる日本の暮らし

2008年公開の映画『おくりびと』は、米国アカデミー賞最優秀外国語映画賞を受賞し、国内外で高く評価されました。

©︎2008 映画『おくりびと』製作委員会 (出典:MOVIE WALKER PRESS

 

納棺師(のうかんし)とは、亡くなった方の体を清め、きれいに整えて棺に納める仕事です。納棺師をテーマに、日本ならではの“別れの美しさ”を描いた作品です。

舞台は現代(当時2008年)の日本ですが、主人公・大悟(本木雅弘)が故郷の山形に戻った先で出会う田舎の風景や人々の暮らしぶりには、どこか昭和の時代を思わせる懐かしさが漂います。大悟は偶然見つけた「納棺師」の仕事に就き、戸惑いながらも遺体や遺族と向き合う中で、その職務に誇りと意味を見いだしていきます。

映画全体を彩るのは、山形の美しい田舎風景。山をバックにチェロ演奏、白鳥の群れ、春の桜、ひなまつり、クリスマスの情景など、日本の四季が丁寧に映し出されているのが印象的です。

作品中には昭和レトロな建物や暮らしの描写も随所に登場。番台のある銭湯や廃館になった映画館や新聞紙に包まれた干し柿、大悟の実家の古民家風インテリアとレコード、納棺師の社長宅のストーブや観葉植物が彩る部屋など、現代劇でありながら昭和の面影を感じさせる空間が描かれています。

納棺師の所作そのものが亡き人への敬意であり、残された人が前を向くための儀式でもあることが静かに伝わってきます。重いテーマでありながら、クスッと笑えるユーモラスな場面が挟まれるのもこの映画の魅力。

現代の作品ながら、懐かしい日本の暮らしや美意識に触れられる作品です。

『となりのトトロ』——日本の田舎風景と、子ども時代の再現性が光る作品

1988年に公開された『となりのトトロ』は、スタジオジブリを代表する長編アニメーション映画です。

© 1988 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli

 

トトロやネコバスといったファンタジー要素が強い本作ですが、昭和30年代の日本の田舎の暮らしや風景が、色濃く描かれています。

主人公である姉妹と彼女らの父親が田舎に引っ越してきた日常が、壮大な山々やきれいな川、あぜ道の田園風景、村人たちとの温かな関わりを背景に描かれます。薪をくべて沸かすお風呂や、ポンプで水を汲む場面、黒電話など、今ではなかなか見られない昭和の生活道具も登場し、どこか懐かしい気持ちになることでしょう。

仕事中の父の机に花びらを並べてお父さん、お花屋さんね」(作中セリフより)と話しかける妹・メイ。子どもの頃、こういう小さな“遊び”をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
大人になって観ると、この場面の愛おしさといじらしさが胸にしみます。

© 1988 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli(出典:https://www.ghibli.jp/works/totoro/

印象的なのが、トトロを見たメイが必死にその体験を訴える場面。父は「それはきっと昔からこの森に住んでいる、すごーく大きな木の精霊に会ったんだね」(作中セリフより)と穏やかに受け止めます。
現実的になりがちな大人の目線でも、子どもの純粋な心に寄り添うこの優しいやりとりがとても心に残ります。

『となりのトトロ』は観る年代によって感じ方が変わる作品です。大人になった今だからこそ、より深く日本の美しい暮らしや親子の温かな心に気づかせてくれる映画です。

『君たちはどう生きるか』——当時の上流家庭の暮らしに触れる上品な世界

2023年公開に公開された宮﨑駿監督・長編アニメーション映画『君たちはどう生きるか』は、第96回米国アカデミー賞(R) 長編アニメーション映画部門賞を受賞しました。


© 2023 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli

 

戦時中の日本を舞台に、少年が異世界を旅するファンタジー作品です。

主人公の牧眞人は、母を亡くした後、父とともに郊外の大邸宅へ引っ越してきます。そこには、和洋折衷の木造建築に畳敷き、障子や床の間がある格式ある日本家屋が広がっており、冒頭から当時の上流家庭の生活が描かれています。

縁側から望む庭園、ちゃぶ台を囲んだ食事など、その時代を感じさせる描写が作品を彩ります。母の妹・夏子の所作は、上品さや気品が漂います。映画全体を通して、まるで昭和の暮らしを見ているような、美しい映像が印象的です。

© 2023 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli(出典:https://www.ghibli.jp/works/kimitachi/

眞人は人の言葉を話す青サギに導かれ、不思議な塔の異世界へ。現実と幻想が交錯する冒険が描かれますが、昭和の暮らしが醸し出す物静かな空気感が、物語全体に深みを与えています。

古き良き日本の生活美と、心の成長を描くファンタジーとして、味わい深い作品です。

【まとめ】

今回ご紹介した3作品は、それぞれ異なる時代や表現手法ながら、日本の暮らしや美意識の美しさを感じさせてくれるものばかり。

忙しい日常の中、こうした映画にふれることで、少しだけ“原点に立ち返る時間”を持ってみるのも、素敵かもしれません。

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