朝ドラの主人公に女性が多い理由を考察!

 

「朝ドラ」の愛称で親しまれている「連続テレビ小説」。

1961(昭和36)年放送の『娘と私』から始まり『おむすび』まで通算111作品(2025年3月時点)を生み出してきました。毎回主人公を演じる俳優が発表されるたびに大きな話題となりますが、主人公の多くは女性であることにお気づきでしょうか。

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今回は、連続テレビ小説(以下、朝ドラ)の主人公に女性が多い理由を考察します。

朝ドラの主人公に女性が多い理由

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近年、朝ドラの主人公に女性が起用されることが多く「朝ドラ=女性の一代記」のイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。

2010(平成22)年以降放送された朝ドラの主人公は、30作中女性の主人公が30名※で、圧倒的に女性が多いことがわかります。
※ 一部夫婦が主人公となっている作品あり

なぜ朝ドラの主人公に女性が多いのか、理由を考察していきます。

NHK大河ドラマとの差別化

NHKのドラマにおいて、朝ドラは女性を中心とした物語を重視し、一方大河ドラマは男性を主人公にする傾向があります。主人公の性別を分けることで、異なる視点からの物語を展開でき、視聴者に幅広いメッセージを届けられるためだと考えられます。

大河ドラマは歴史的背景に基づく大作であり、時代の流れや国家の興亡などの大きなテーマを扱います。大河ドラマにおける女性の主人公は、主に家族や親族の中での役割が大きく、国政や戦争に対して直接的な影響力を持つキャラクターが描かれることはあまりありません。

女性の視点から歴史を振り返る作品もありますが、作中で実際に鎧を着て戦うのは男性です。ゆえに、大河ドラマは男性の主人公が多いと考えられます。

主婦層をターゲットにしていた時代背景

朝ドラは、もともと主婦層の視聴を意識した作品でした。作中で母親や妻として奮闘する女性の姿を描くことで、作品により感情移入してもらおうというねらいで、女性を主人公に設定していると考えられます。

NHKの製作者たちは、主婦層をターゲットにして、朝ドラの視聴習慣につなげる工 夫を重ねました。朝の忙しい時間に家事をしながらでも、耳で聴いただけでストーリーがわかるよう「語り」を逐一入れたり、金曜・土曜に次週の展開に気を持たせる仕掛けをしたりしたのです。

朝ドラの放送時間について、第1作『娘と私』は午前8時40分から9時まで放送されていました。第2作『あしたの風』からはしばらく午前8時15分から8時30分までが続き、現在は午前8時から8時15分までとなっています。いずれも朝の忙しい時間帯に設定されており「朝ドラは主婦が家事をしながら観るもの」という概念が根強く残っていると考えられます。

自立した女性像の表現

朝ドラは、自立して人生を切り開いていく女性の様子が描かれることが多いです。そのためか、朝ドラの主人公には「お転婆娘」が多く、無茶をするシーンが頻繁に描かれています。

具体的には以下のようなシーンです。

お転婆な主人公を設定することで、元気で思い切りのいいリアルな女性像を描くことができると考えられます。強く自立した女性像は、視聴者に共感を呼び起こす役割を果たしていると言えるでしょう。

現代において、自立した女性の姿が求められている中で、朝ドラはこのトレンドに応えた形となっています。また、妻、母、仕事など女性の様々な役割を描写し、視聴者視点における女性像の複雑さを示すことも、シリーズ全体の意義と言えます。

朝ドラの主人公は今後も女性が多くなる

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朝ドラの主人公は、今後も女性が多くなると考えられます。なぜなら、朝ドラの主人公になるのは女性若手俳優の登竜門という位置づけがあるためです。朝ドラに出演することは、その後のキャリアに大きな影響を及ぼすことが多く、知名度アップはほぼ確実だと言えるでしょう。

演技経験が無かったところから主人公に起用された、2004年度前期『天花』の藤澤恵麻さんや、2025年度後期放送予定『ばけばけ』の高石あかりさんなど、ほぼ無名だった俳優が朝ドラの主人公に合格することで、一気に全国から注目されるようになった例は多くあります。

無名の俳優でも、朝ドラに出演すれば、放送期間の半年は常にドラマの視聴者に注目され、話題となったシーンがあればその都度ネットニュースになりますよね。朝ドラに少し出演するだけでも注目されますが、主人公となれば、発表されたその日から知名度は全国区です。

俳優の中には、何度も朝ドラのオーディションに落ちたと話す人もいます。2020年後期『おちょやん』で主人公に選ばれた杉咲花さんは「ヒロインオーディションを何回か受けたが、縁がないのかなと思っていた」と語っています。それだけ朝ドラの主人公を射止めることは価値があり、何度も挑戦する意義があると言えるでしょう。

今後も多くの女性若手俳優が、朝ドラの主人公を目指すと考えられます。

まとめ

時代背景を投影し、数々の魅力的な主人公を生み出してきた朝ドラは、長年のファンも多いのではないでしょうか。主人公の健気さに涙したり、活力に元気をもらったり、自分と似た境遇に感情移入したりなど、心を動かされることが多いですよね。

過去の朝ドラでは、女性の社会進出が難しかった時代に自ら道を切り開く様子を描くことが多かったですが、今は女性も当たり前に働くようになり、時代はどんどん変わってきています。明るく元気なだけではなく、さまざまな性格の主人公がいても良いかもしれません。

今後はどんな主人公が描かれるのか、楽しみですね。


出典

出典:NHKアーカイブス(連続テレビ小説 製作者座談会)

出典:東洋経済ONLINE(朝ドラのヒロインに「お転婆」が多い納得理由)

出典:NEWSポストセブン(杉咲花、吉岡里帆も 朝ドラ選考で落ちた経緯語る女優が増加)

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