なぜアメリカのドラマは長いのか? 独自の文化を考察!

なぜアメリカのドラマは長いのか?-独自の文化を考察!

 

2023年にNETFLIXで最も再生された『SUITS』は約8年(2011年〜2019年)・シーズン9まで続きました。筆者は何気なくこのドラマを再生して、時間の経過を忘れてしまうくらいにドラマに引き込まれたのを思い出します。

楽しいドラマがこの先もずっと見られる!」この期待感は、視聴者にとっては嬉しいことですよね。
アメリカドラマは同作だけに留まらず、ほぼ同時期に超大作『Game Of Thrones』(2011年〜2019年、以下『GOT』)が放映されていました。最後のシーズンはアメリカでも賛否両論が巻き起こるような展開であった同作もまた、8シーズンに及ぶロングラン作品となりました。

ここで、ふと思いませんか?

「アメリカのドラマ(シリーズ)ってどうしてそんなに長いの?」

今回は、そんな疑問に対する答えを、こんなキーワードたちから考察してみましょう!

本日のキーワード

これを読み終えた頃には、あなたのアメリカドラマの見方がまた一味も二味も変わってしまうかも?

Laundry Folding Show 〜洗濯物を畳みながら見る番組?〜

続きが気になるのに、どこからでも始められる謎

筆者の日本人の友達は、口を揃えて言うんです。「アメリカのドラマって長いですね
反して、筆者のアメリカの友人はこう言うわけです。「ONE PIECE』は長すぎて、見始める勇気がないよ!

これ、一見相反しているように聞こえませんか?
しかし、これらのコメントはかなり大切なことを示していると思うんです。

洗濯物を畳みながら見ることができる気軽さ

アメリカのドラマは、英語でこんな呼ばれ方をされることがあります。

Laundry Folding Shows

日本語に訳すならば「洗濯物を畳みながら見るもの」くらいになるでしょうか。

筆者はアメリカのドラマで英語を学んできました。『Friends』や『Gossip Girl』にどれほど助けられたことでしょう。
これらの作品には、キャラクターに変化が訪れたり、ストーリーの展開にそれなりの継続性はあったりするのですが、たとえ少し飛ばしてしまっても、作品全体の理解度にそれほどの影響はありません。

『ONE PIECE』で一話飛ばすと、全体の流れについていけなくなることがありますよね。アメリカのドラマはその逆で「このエピソード退屈だな」と感じて少し先に飛んでも、その内容に追いついていけることも多いです。

特にアメリカでは、ドラマに関してある程度のパターンが重要視される傾向があります。

それは

という点です。これらには国民性など、さまざまな理由が複雑に絡んでいると思われます。

Inside Joke

アメリカで生活していると“Inside Joke”に困る時がありました。

©︎Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
引用: Fired & Free

“How you doing?” と声色を低くして言われたら、何のドラマの誰のセリフか連想できるでしょうか?
そう、『Friends』のお調子者・Joeyの決め台詞です。

冬の寒い夜に、”Winter is coming.”と友達がキメ顔で言ってきたら?
これは『GOT』・John Snowの決め台詞です。

アメリカでは、特に長いシーズン放映されるドラマはドラマと人々の生活が密接に繋がり、文化的なアイコンとして扱われることが多いです。これが“Inside Joke”、いわゆる「お決まりのセリフ」を指します。

“Inside Joke”が生まれるような濃いキャラクターを生むようなドラマは、物語を見る頻度があがれば上がるほど、記憶に残り、また新たな発見をしたくなりますよね。

シンジケーション 〜アメリカの番組は売買される?〜

シンジケーションという文化

アメリカのブロードキャスティング事情は、アメリカ文化独特のものと言ってもいいでしょう。放送局がドラマを供給する日本のテレビとは違い、アメリカでは地方放送局が多く乱立しています。

テレビ番組は「売買」される仕組みになっています。どういうことかというと、一度3大ネットワーク ※ で放送したものの放映権利を販売したり、番組を新しく作って販売したりします。このように、アメリカにおいてテレビ番組は「売り買いされるもの」なのです。

※ 3大ネットワークとは、以下3つの大きな放送局を指します。

なぜドラマシリーズを長くするのか 〜100話が基準?〜

100話が儲けを生む基準

テレビ番組が売り買いされる独自のシステムの中では、より人気のショーが利益を生みます。放映権を求めたり、DVD化したりするなどして販路拡大を図る基準値として「100話」がベースとなってくるのです。

「100話」に到達すれば、制作側にも販路拡大を狙う人たちにも、作品への信頼度が生まれます。つまり「長い=人気=儲かる」という公式です。
この公式を求めて、ドラマは制作されるのですね。

Bottle Episodeという概念

Bottle Episode(ボトル・エピソード)、何やら聞き慣れない言葉ですよね。「キャストとお金を注ぎ込まずに撮影する話」といった意味合いの言葉です。

さまざまなテレビ番組が多く売買されるアメリカで、新しい番組を生み出したとしても、その番組がこれから末長く愛されていくどうかは、賭けにも近いところがあります。だから、アメリカの制作会社はドラマのシーズン1を「物語の提案」のような形で世に送り出すのです。

シーズン1でも、ある程度シーズンが進んでも「ここにお金も人員もかけられない」というエピソードの時には、あえて「ボトルエピソード」として送り出すんだそうです。

ボトルエピソードの条件は

出典https://seriesmania.com/forum/en/2024/07/22/are-the-long-running-tv-series-going-extinct/?utm_source=chatgpt.com

ことが挙げられます。不必要なシーンを撮ったり、長引かせる努力をしたりするということではありません。

場面をある程度固定してしまうことで、視聴者側がキャストの緊迫した会話に集中しやすいという利点もあります。洗濯物を畳む間に見られる簡素さは、こういうところからも生まれているんですね。

アメリカドラマ史上最高傑作と呼び声の高い『Breaking Bad』(2008年〜2016年)では、ボトルエピソードにして「作中最も印象に残る名場面」(One of ‘Breaking Bad’s Best Episide Wasn’t Planed.’ )と評されることの多い、『Fly』(シーズン3・10話・邦題『かなわぬ最期』)が最たる例かもしれません。主人公の2人が工場で飛び回るハエを追い回しながら、人生の儚さについて語り続けるこの10話は、ファンの間でも語られることの多い名場面です。しかし、キャストやコストなどさまざまな面で撮影続行に困難が生じ、苦肉の策としてこの場面が撮影されたと、後に監督が語っています。

シリーズが長くなることで役者も育つ

こちらの写真をご覧ください!

©︎Home Box Office,Inc. All rights reserved. HBO(R) and related channels and service marks are the property of Home Box Office,Inc.
引用:https://www.eonline.com/news/1029705/growing-up-game-of-thrones-how-the-cast-has-changed-since-season-1

左側の少女が右側の素敵な女性に成長しました。『GOT』の人気キャラクター・アーリアを演じるメイジー・ウィリアムズの成長の様子です。

シーズンが長くなれば、役者にもメリットがあります。慣れた収録現場やクルーと長い間撮影に挑むことで、精神的安定が図れます。キャリア序盤にメインキャラクターに抜擢された場合には、徐々に演技に変化を出すこともできるでしょう。共演者との協調力も育つため、ドラマがヒットしてプレッシャーが大きくなっても、お互いでメンタルケアができます。

そして何より、アメリカは契約社会です。シーズンが重なるごとに契約更改がなされ、報酬は上がっていきます。

アメリカのドラマ俳優がよく言うことですが、彼らはたくさんのドラマに出演することを好みません。1作で終わる映画とは違って、先ほどから述べているドラマの特性上、設定やシーンが単純化されていることが多いため、どの役をやっていても同じように見られてしまう傾向があるからでしょう。

俳優にとって、自分が出演するドラマが長くなるかどうかは、今後のキャリアに大きく関わってくるのですね。

まとめ

ここまで「アメリカのドラマはなぜ長いのか」という問いに対して、アメリカドラマの特性や放送局の仕組み、役者のキャリアなどの視点から考察してきました。

映像サブスクリプションの登場により、ドラマの長さは以前よりは短いものが主流になりつつあります。それでも2023年にNETFLIXで最も再生されたドラマは『SUITS』で、シーズン9まで続いています。アメリカの視聴者は、かつてのドラマに求めたものと同じように、長い期間楽しませてくれるドラマを待ち侘びているのかもしれませんね。

長いドラマに夢中になって一気に見ることを、英語ではBinge-watch(ビンジウォッチ)と呼びます。皆さんも、疲れた体をアメリカドラマビンジウォッチングで癒してみてはいかがでしょうか。

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