

突然ですが、あなたの昔の夢はなんでしたか?
きっとさまざまな夢を持っていたでしょう。その夢をそのまま叶えた方もいれば、まったく違う道を歩み始めたりした方もいるはずです。そして今もなお、新しい夢に向かって進んでいる人もいるでしょう。しかし「本当にこれが自分の夢なのだろうか?」と迷うこともあると思います。
こんなふうに迷った時におすすめしたいのが、小林賢太郎著『僕がコントや演劇のために考えていること』です。
©︎小林賢太郎/幻冬舎
小林賢太郎さんは、舞台や映像のエンターテインメント作品の企画・脚本・演出をされている方です。本著にはタイトルの通り、小林賢太郎さんがコントや演劇のために考えていることが書かれています。
例えば、「面白いの領域は無限」であるということ。
私たちは作品を観た後に「面白かった」と言いますが、これはなにも「笑った」という意味だけではありません。「驚いた」「不思議だった」「気持ちよかった」もすべて「面白い」に入るのです。
筆者が一番心を動かされたのは「海外に憧れて、憧れ終えてから見えた自分のやるべきこと」という目次でした。
ニューヨークに憧れて、時には数か月滞在しながら演劇やミュージカルを鑑賞していたという小林賢太郎さん。はじめは「本場だなあ」と憧れのまなざして見ていたものの、次第に「自分の芸術を表現するのに、国も都市も関係ない」と気付いたそうです。
そして本にはこう書かれています。
“どこかに何かを手に入れに行かなくてはできないような表現は「ってことは、向いてない」と見なしていいんだと思うのです。だって、そこに生まれながらに住んでる人の方が絶対的に有利なわけですから。(引用『僕がコントや演劇のために考えていること』)”
(スタジオコンテナ公式チャンネルより)
本書を手に取った当時、筆者の夢はお笑いの劇場で働くことでした。高校生の時に不登校だった経験をもつ自分にとって、コンプレックスや嫌な思い出を笑いに変えられる「芸人さん」は憧れの存在。そんな人を支えたいと思い、音響や舞台作りを学べる大学に進学しました。
しかし、筆者が住む地域は、都会に比べて劇場やイベントが少ないところ。日が経つにつれて「これが本当に自分の夢なのか」わからなくなっていたのです。筆者はこの文章を読んだ時に、少し救われたような気分になりました。「劇場もない」「交通費も高い」「都会の人はずるい」と負の部分ばかりに目を向けている自分に、嫌気が刺していたからです。田舎に住む大学生である「今の自分」には、都会で働くことは向いていない。ならば、「今の自分」が有利なことはなんだろう?
そう考えた筆者は、落語研究会サークル活動に加わることを決めました。人前に立つのは好きではありませんでしたが、高座名をもらい、落語を始めたのです。お笑いが好きな人たちと話したり、一緒に寄席を作り上げたりする日々は、本当に楽しいものでした。このサークルに入ったことによって、未来の夫と出会うことができました。
たちまち就職の時期になり、「劇場がたくさんある都会に行く」もしくは「地元に残る」という分かれ道に立ちました。筆者は悩んだ末に、落語研究会で出会った恋人や家族のことを考え、地元の劇場スタッフになることを選んだのです。
この本に出会わなければ、もしかしたら今でも、都会の劇場に憧れを抱き続け、自分の手元にないものばかりを数えてしまう人生になっていたかもしれません。何より夫と出会うこともありませんでした。
筆者の人生を変えた『僕がコントや演劇のために考えていること』。コントや演劇を考える職ではない方にも、新たな視点や発見を与えてくれる本です。
もし自分の夢に自信がなくなって、悩まれてる方がいたらぜひ手に取ってみてください。人生を切り開くような、心に刺さる一文が見つかるかもしれません。