正月の風物詩として知られている箱根駅伝。
箱根駅伝に興味はあるものの「いつから始まったのか?」「なぜ箱根なのか?」など、箱根駅伝の歴史や背景を知っている人は少ないです。
本記事では、箱根駅伝がどのように始まったか、なぜ箱根の地が選ばれたのかを解説していきます。100年以上の長い歴史には意外な事実も。
最後まで読んでいただき、箱根駅伝の魅力を再発見してください。
この章では、箱根駅伝の始まりについて解説していきます。
箱根駅伝が初めて行われたのは今から約120年前の1920年(大正9年)です。1920年2月14日午後1時に、第1回大会が開催されましたが、駅伝の名称は「四大校駅伝競走」。
現在のように1月2日・3日の開催でもなく、20の出場校でもありません。
そして、第1回大会に参加した4校は、慶應義塾大学、東京高等師範学校(現:筑波大学)、明治大学、早稲田大学です。
早稲田大学の臙脂(えんじ)、明治大学の紫紺(しこん)の襷(たすき)は馴染みがありますが、第1回から出場していたのは驚きですね。
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箱根駅伝の創設に尽力した人物が金栗四三(かなくり しそう)です。
金栗は日本人初のオリンピック選手で、「日本マラソン界の父」と呼ばれています。2019年大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』で、中村勘九郎さんが演じたことでも話題になりました。
金栗は「世界に通用するランナーを育成したい」という思いから、世界から注目される長距離走を構想します。その構想から、箱根駅伝が生まれました。
「箱根から世界へ」という箱根駅伝のコンセプトには金栗の思いが込められており、大会で活躍した選手にはMVPとして『金栗四三杯』が授与されています。
年によっては厳しい寒さが襲う箱根の山。なぜ箱根が駅伝コースとして採用されたのでしょうか?
ここではいくつかの説を紹介します。
一つ目の説は、東京から箱根までの距離と地形が、長距離走の練習と競技に適しているという説です。
箱根は東京から約80kmの距離にあります。自然豊かな地域でありながら、交通インフラが整備されていたため、長距離走には理想的な場所であったとされたようです。
箱根駅伝のコースは、江戸時代の東海道の宿場町を結ぶルートとなっています。
中継地点が川崎宿(鶴見)、戸塚宿、平塚宿、小田原宿と、歴史的な宿場町に設定されていることから、この説が裏付けられます。
一説によると、箱根駅伝は観光客が減る冬に箱根に人を呼び込むためのイベントとしての側面もあったともされています。
山登りの5区・山下りの6区にある箱根の温泉街は、たくさんの人であふれていますね。
箱根は美しい自然や山岳信仰で知られ、多くの人々にとって重要な地域です。
駅伝が行われるコースに自然の厳しさや日本の風景が反映され、レースの厳しさやドラマが引き立つため、箱根が駅伝のコースになった説もあります。
箱根駅伝が1月2日・3日の正月に行われるようになったのは、1956年(昭和31年)の第31回大会からです。
正月に開催される理由にも、複数の説があります。
箱根駅伝のコースとなる国道1号線は、通常は交通量の多い主要幹線道路です。
しかし、年末年始は比較的交通量が少なくなります。このため、長時間にわたって道路を使用する箱根駅伝の開催に1月2日・3日は適しているとされたようです。
正月は学生の冬休み期間中であり、学業の負担が少ない時期です。これにより、選手たちは箱根駅伝に集中して参加することができます。
暑すぎず寒すぎない気候条件が、選手のパフォーマンスにとって好ましいです。夏の暑い気候よりも、1月の気候の方が長距離走に適しています。
現在では箱根駅伝のテレビ中継は当たり前のようにありますが、その歴史は意外にも浅いです。
1979年(昭和54年)の第55回から東京12チャンネル(現在のテレビ東京)が初めてのテレビ放送を開始しました。しかし、現在のような生中継ではなく録画ダイジェスト放送という驚きの事実。生中継が生み出す臨場感はなく、感動が生まれにくそうです。
現在の生中継になったのは1987年(昭和62年)の第63回からです。テレビの生中継からはまだ40年しか経っておらず、箱根駅伝の長い歴史からするとわりと最近の出来事ですね。
テレビで箱根駅伝を生中継をするようになってから、ドラマチックな展開や、学生の力走が伝わり、人気に拍車がかかりました。
箱根駅伝は熱いドラマと感動の詰まった大会として人気がありますが、長い歴史や創設の背景に触れた皆さんはきっと次回の大会から見方が変わるでしょう。
金栗四三を中心に創設された箱根駅伝は、2025年で101回目を迎えます。選手も含め、いろいろな人達の思いを感じながら、箱根駅伝を観戦しましょう。