イケメン乱舞な2.5次元の歴史と魅力

イケメン乱舞な2.5次元の歴史と魅力

2次元から飛び出したイケメンのパフォーマンスが、アニメ漫画好きな女子を夢中にさせてやまない2.5次元の世界。その人気は衰えを知らず、現在もファンの裾野を広げています。
今回は2次元と3次元の長所を併せ持った、2.5次元舞台の魅力と歴史を深堀りしていきたいと思います。

2.5次元ミュージカルと漫画原作舞台の差別化

漫画・アニメ原作のミュージカルはこれまでも存在し、宝塚歌劇団の『ベルサイユのばら』など、数々のヒット作を生み出してきました。

されど従来の舞台ではアニメや原作はあくまで素材に過ぎず、3次元の役者が演じるお芝居の域を出ませんでした。

現在の2.5次元ブームの先駆けと言えるのが、1990年代前半に人気アイドルグループSMAPが演じた『聖闘士星矢』や桜っ子クラブさくら組が演じた『美少女戦士セーラームーン』の舞台。両作の共通点は女性人気が高いことで、観客の大半を若い女性が占めていたそうです。

2003年、『聖闘士星矢』および『美少女戦士セーラームーン』の舞台に携わったスタッフが、「週刊少年ジャンプ」で連載されていた許斐剛の漫画『テニスの王子様』のミュージカルを企画。

 

(出典:https://x.com/TennimuNews/status/1842036926758715678

 

東京芸術劇場で上演された『テニスの王子様』は、初日の客入りこそ低調だったものの、口コミで徐々に動員数を伸ばし、2024年現在まで続く長寿シリーズになりました。通算公演数は2000回を突破、累計動員数は300万人を超えています。

2015年にはDMM.comがリリースしたゲーム、『刀剣乱舞-online-』のミュージカルが始動。「ミュージカル『刀剣乱舞』」と題され、熱狂的な人気を獲得します。

なお2.5次元とは、我々が住む3次元とアニメや漫画が属する2次元の中間を意味します。3次元の人間が2次元のキャラクターを演じることで生まれる幅と厚み、新たな魅力こそが2.5次元の醍醐味なのです。

女性にウケる2.5次元舞台の特徴

女性にウケる2.5次元舞台の特徴は以下3点、「キャストの過半数が男性」「個性的なキャラが数多く登場するスポーツ・バトル物」「女性に人気の漫画・アニメ・ゲームが原作なこと」。
スポーツが主題の2.5次元成功作として挙げられるのは『テニスの王子様』『弱虫ペダル』『ハイキュー!!』『ブルーロック』『黒子のバスケ』『ダイヤのA』他多数。

 

(出典: https://x.com/TOHOanimeSTORE/status/1407610073732435969

 

とりわけ『週刊少年ジャンプ』の漫画はBL二次創作を嗜む腐女子や推しとの恋愛を妄想する夢女子に絶大な支持を得ているので、2.5次元に足を運ぶファン層にも如実に偏りが現れています。

演者が男性のみの2.5次元が好まれるのも「推しと他の女の絡みを観たくない」と身構える、腐女子・夢女子の複雑な心理が関係しているのでした。
誰だって、ストーリーへの没入を妨げるノイズは避けたいですよね。

バトル物で人気なのは『戦国BASARA』『文豪ストレイドッグス』『文豪とアルケミスト』『刀剣乱舞』『呪術廻戦』『東京リベンジャーズ』『進撃の巨人』『鬼滅の刃』など。ここでもジャンプ作品と2.5次元の親和性が際立ちます。
女性向けスマホゲーム『あんさんぶるスターズ!』『A3!』『魔法使いの約束』なども続々とミュージカル化されており、最近では2.5次元化がコンテンツの人気指標と見なされるようになりました。

2024年3月期の2.5次元ミュージカル市場は200億円の興行収入を記録し、エンタメ業界を名実ともに牽引しています。

 

(出典:https://x.com/ensemble_stage/status/1738001557285990442

 

演者は新人アイドルか声優

2.5次元で活躍する役者の大半は現在売り出し中の新人アイドル、デビューから日が浅く知名度や人気に乏しい俳優。
もちろん例外はあり、実力派の役者がキャストに組み込まれたり、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』のように、声優本人がキャラを演じることもあります。

 

(出典: https://x.com/hm_rtstage/status/1842532025296978022

 

2.5次元はキャラの再現度を重視する為、実際の知名度や人気は二の次。審査基準には原作やキャラの理解度が深く関わってきます。
漫画の実写化において全くキャラに合ってない役者が起用されるのは、その多くが俳優の人気に依存したヒットを狙っているから。片や2.5次元は原作準拠で配役を決めるので、最大の萎え要素である解釈違いがまずもって起こりません。

大抵の作品がDVDやBlu-rayの販売・動画配信・ライブビューイング・アクスタやブロマイド筆頭にキャストのグッズ制作を行っている為、推し活が捗るのもポイント。
その性質上推しキャラと俳優を同一視し応援するファンが大変多く、若手俳優の登竜門として認識されています。2.5次元出身の俳優がニチアサやBLドラマで活躍する場面も増えてきました。『スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE 〜さよなら絶望学園〜』で主人公・日向創を演じた横浜流星は、2.5次元出身俳優の出世頭として有名ですね。

2.5次元は音楽・ダンス・演出が三位一体となった総合芸術

原則2.5次元ミュージカルは歌唱パートと芝居パートを交互に挟んだ構成で、演者には歌唱力と演技力、双方ひっくるめた総合的な表現力が求められます。2.5次元ステージは芝居オンリー。
故に『刀剣乱舞』の場合は『刀剣乱舞ミュージカル』略して『刀ミュ』、演劇を『刀剣乱舞ステージ』略して『刀ステ』と呼び分けています。

 

(出典:https://x.com/stage_touken/status/1828009496339194224

 

スモークやライト、歌・ダンス・演技全部をひっくるめた役者のパフォーマンスが輝く2.5次元は、その圧倒的なエンタメとしての完成度の高さでもって、今後もファンを増やし続けていくのは間違いありません。

2.5次元を初めて観る人には「ミュージカル『刀剣乱舞』」がおすすめ。
原作ゲームの『刀剣乱舞-online-』にはメインストーリーと呼べるものが存在しない為、ミュージカル化に際し書き下ろされる脚本はすべてオリジナル。既存プレイヤーも新鮮な気持ちで『刀剣乱舞』の世界に没入できます。

血沸き肉躍る本格的な殺陣の再現、世界観に合った雅で艶やかな音楽、ここでしか見られない刀剣男士の組み合わせや尊い関係性は最高の一言!
これを観た後はゲームの解像度が爆上がりすることうけあいです。

現在の2.5次元ブームの立役者となった、『テニスの王子様』(通称『テニミュ』)もぜひ押さえてください。
数多くの実力派俳優を生み出した伝説のミュージカル、光と音楽が一体化したダイナミックな演出と演技に込められた熱量は2.5次元の魅力を余さず伝えてくれます。

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